沖縄のレンタカーは、観光客の増加以上のペースで増えています。

沖縄総合事務局と沖縄県の公表資料をつなぐと、県内のレンタカー保有台数は2006年度の21,459台から、2025年度末には62,554台へ増加しました。同じ期間に事業者数は254から2,402へ増えています。

この記事の結論
沖縄のレンタカー市場は、観光客の増加に合わせて車両を増やす段階から、多数の事業者と車両を抱え、空港周辺・離島への集中や需給変動を管理する段階へ移りました。今後は県全体で一律に台数を増減するのではなく、都市・観光幹線と低密度地域を分けて交通を設計する必要があります。

20年間で車両は2.9倍、事業者は9.5倍

比較可能な公表系列を使い、2006年度と2025年度を比べると市場の変化が見えてきます。

指標 2006年度 2025年度 変化
レンタカー保有台数 21,459台 62,554台 約2.9倍
事業者数 254 2,402 約9.5倍
入域観光客数 約570.5万人 約1,093.5万人 約1.9倍
1事業者当たり台数 84.5台 26.0台 約69%減

車両数よりも事業者数の増加がはるかに大きく、1事業者当たりの平均台数は84.5台から26.0台へ減りました。統計上の供給主体が細分化し、小規模化していることが分かります。

ただし、ここでいう「事業者数」は許可・事業単位の集計であり、独立した法人企業数と完全に同じとは限りません。

主要年の推移

年度 事業者数 保有台数 入域観光客数
2006 254 21,459台 約570.5万人
2012 408 25,464台 約592.5万人
2018 812 41,249台 約1,000.4万人
2019 876 41,155台 約946.9万人
2020 940 32,467台 約258.4万人
2021 1,021 31,914台 約327.4万人
2023 1,885 51,070台 約853.3万人
2025 2,402 62,554台 約1,093.5万人

2019年度以降は車両数の集計方法が変更され、登録データの活用が広がっています。長期的な傾向は追えますが、2018年度以前との小さな前年差を厳密に比較するときは注意が必要です。

観光客の増加だけでは説明できない

2018年度から2025年度に絞ると、違いはさらに鮮明です。

指標 2018→2025年度の変化
入域観光客数 9.3%増
レンタカー保有台数 51.6%増
事業者数 195.8%増

観光客数が約1割増える間に、車両は約5割、事業者は約3倍になりました。観光客100万人当たりのレンタカー台数も、2018年度の4,123台から2025年度の5,720台へ38.7%増えています。

この数字だけで「過剰供給」と断定することはできません。利用日数の長期化、個人旅行の増加、繁忙期のピーク、必要とされる車種の変化などがあれば、必要台数も増えるためです。

それでも、観光需要より供給能力の方が速く拡大し、供給余剰や価格競争を監視すべき段階に入ったことは確かです。

県内車両の半数が豊見城・那覇に集中

レンタカーは県内に均等に配置されていません。2025年度末の上位地域を見ると、空港周辺と主要離島への集中が分かります。

地域 保有台数 県内シェア
豊見城市 19,648台 31.4%
那覇市 13,037台 20.8%
宮古島市 7,157台 11.4%
石垣市 4,687台 7.5%
中頭郡 3,858台 6.2%
浦添市 3,249台 5.2%

豊見城市と那覇市だけで32,685台、県全体の52.3%を占めます。那覇空港を起点とする営業所や車両置場の配置が影響していると考えるのが自然ですが、公表統計自体が立地理由まで調査しているわけではありません。

一方、宮古島市と石垣市の合計は11,844台で、県全体の18.9%です。公共交通の選択肢が限られ、観光地が島内に分散する地域では、レンタカーが独立した観光インフラとして機能しています。

沖縄のレンタカー問題には、那覇空港周辺に集中する市場と、自動車の代替が少ない離島市場という二つの異なる構造があります。

なぜ沖縄観光はレンタカーへの依存が強いのか

最大の理由は、観光地が広く分散する一方で、本島中北部や離島までつながる鉄道網がないことです。

ゆいレールは那覇都市圏で重要な役割を担いますが、北谷、恩納、名護、やんばるなどの主要観光地域へ直接つながっていません。バスやタクシーもありますが、渋滞によって路線バスの定時性が下がると、旅行者は時間を自分で調整しやすいレンタカーを選びやすくなります。

観光客調査では、2008年度に県内交通手段としてレンタカーを利用した割合が53.8%、2020年度の国内客調査では67.2%でした。複数回答の調査であり、2020年度はコロナ禍による標本上の制約もあるため、厳密な連続比較ではありません。それでも、レンタカーが沖縄観光の中心的な移動手段であることは確認できます。

外国人旅行者でも利用率は高く、2023年度の国際線航空客調査では52.5%がレンタカーを利用していました。台湾は55.0%、韓国は54.6%、香港は57.6%です。国際線の回復に伴い、多言語での交通ルール案内や運転支援の重要性も再び高まっています。

レンタカーは滞在中の周遊全体を支えている

沖縄総合事務局が592グループを対象に行ったプローブ調査では、次の利用実態が報告されています。

  • 平均貸渡利用期間:3.3日
  • 平均走行距離:287.7km
  • 1日当たり:約6トリップ
  • 1日平均運転時間:約2時間50分

レンタカーは空港とホテルを結ぶだけではなく、滞在中の観光行動全体を支える移動手段です。

ただし、この調査は2013〜2014年前後の一時点を対象にしたものです。3.3日を現在の平均利用日数や、毎年変わらない値として扱うことはできません。

コロナ禍が示した需給調整の難しさ

観光需要とレンタカー台数は通常期には強く連動します。しかし、車両、駐車場、営業所、人員を抱える事業では、急激な需要変化に供給をすぐ合わせることができません。

2019年度から2020年度にかけて、入域観光客数は約946.9万人から約258.4万人へ72.7%減少しました。一方、レンタカーは41,155台から32,467台へ21.1%減にとどまり、事業者数は876から940へ7.3%増えています。

反対に観光が回復した局面では供給不足と料金上昇が起こり、その後に急速な増車と新規参入が進みました。

この経験は、沖縄のレンタカー市場が次の二つのリスクを抱えることを示しています。

  1. 需要が急減したとき、車両供給をすぐ減らせない
  2. 需要が急回復したとき、増車が間に合わず、その後に供給が膨らみやすい

台風、感染症、航空路線の変化など、観光需要が外部要因で大きく動く沖縄では、保有台数だけでなく実際の稼働状況を把握する必要があります。

自動車依存が自己強化する循環

レンタカーを含む自動車交通が増えると、道路速度が低下します。路線バスも同じ道路を走るため、渋滞によって定時性が下がります。

バスが遅れると、旅行者は「自分で時間をコントロールできる」レンタカーを選びやすくなり、さらに自動車交通が増えます。

レンタカー増加 → 渋滞 → バスの定時性低下 → レンタカー選択の増加

空港周辺では、航空便が集中する時間帯に返却、給油、営業所への送迎、清掃と再配車も重なります。豊見城・那覇に県内車両の半数以上が集中する現在、レンタカー政策は空港交通や渋滞対策と切り離せません。

分かるのは「何台あるか」、分からないのは「どう使われたか」

沖縄のレンタカー統計には大きな空白があります。

指標 公開データの状況
保有台数・事業者数 毎年度の公表系列あり
実稼働率 統一的な県年次系列を確認できず
平均貸渡日数 継続的な年次系列なし
平均日額料金 公的な県平均系列なし
軽・コンパクト・ミニバン等の構成 公的な県年次系列なし
レンタカー事故率 貸渡車日や走行距離を分母にした連続系列なし
会社別の県内保有台数 統一基準の公開系列なし

2025年度末の車両は、乗用車54,812台、貨物車6,453台などに分類できます。しかし、乗用車を「軽」「コンパクト」「ミニバン」「SUV」といった利用者向け商品クラスへ分ける公式統計はありません。

事故についても、単純な件数だけでは利用量の増加と危険度の変化を分けられません。「事故件数 ÷ 10万貸渡車日」など、実際の利用を分母にした指標が必要です。

現在は6.2万台あることは分かっても、今日何台が動き、何日借りられ、どの地域・時間帯へ向かったかを継続的に把握できません。需給や渋滞への影響を判断するには、許認可データと匿名化した貸渡実績を組み合わせる必要があります。

レンタカーの増加と交通への負荷に、どう向き合うか

ここまで見てきた問題は、レンタカーの車両・事業者数が観光客以上のペースで増え、空港周辺や観光地に集中することで、渋滞、返却・送迎の混雑、駐車場不足、バスの定時性低下につながり得ることです。加えて、稼働率や移動先のデータが乏しく、どこでどれだけ負荷が生じているかを正確に把握できません。

一方で、本島中北部や離島ではレンタカーが欠かせない移動手段です。そのため、県内全域で一律に台数を減らすことが答えではありません。レンタカーに依存しなくても移動できる地域と、不可欠な交通として支える地域を分けて考える必要があります。

都市・幹線観光軸では、レンタカー以外の選択肢を増やす

那覇から北谷、恩納、名護など需要が集中する軸では、公共交通の速さと定時性を高める余地があります。

  • バス優先レーンや信号優先
  • パーク・アンド・ライド
  • ホテルへの荷物配送
  • 空港・ホテル・観光施設を結ぶ乗車券
  • 観光地駐車場の予約・満空情報

「旅行中ずっとレンタカー」以外に、「那覇では公共交通、北部周遊日だけレンタカー」といった選択を合理的にすることが重要です。

離島・低密度地域では、不可欠な交通として管理する

宮古・石垣などでレンタカーを機械的に減らすと、代替交通が弱い地域では旅行者と住民の双方が不便になります。

必要なのは、繁忙期の予約容量、観光地の駐車予約、宿泊施設との共同送迎、小型・低排出車への転換、自然環境上センシティブな地域への流入管理です。

EV化は走行時の排出削減には役立ちますが、渋滞や駐車場不足を解決するわけではありません。脱炭素化と総交通量管理は、別の目標として評価する必要があります。

「台数の拡大」から「使われ方」を考える段階へ

沖縄のレンタカーは、観光客の増加を追いかけて車両を増やすだけの市場ではなくなりました。

2025年度末には62,554台、2,402事業者へ達し、観光客100万人当たりの供給量もコロナ前を大きく上回っています。今後の課題は、車両総数だけで市場を判断するのではなく、稼働率、時間帯、場所、車種、安全、環境負荷を可視化することです。

都市・幹線観光軸ではレンタカー以外の移動手段を使いやすくし、離島・低密度地域ではレンタカーの利便性を保ちながら、駐車・安全・環境への負荷を抑える。この地域ごとの考え方が、沖縄の地理と観光の実態に最も合っています。

主な出典

本記事は公開資料を基にDEEJI編集部が整理・計算した調査記事です。公表されていない稼働率や料金を推定値で補わず、確認できるデータと政策的な推論を区別しています。