那覇の渋滞は、この6年間で改善したのでしょうか。
国土交通省の全国道路・街路交通情勢調査(道路交通センサス)を使い、2015年と2021年の平日朝夕における混雑時旅行速度を比較しました。結論から言えば、那覇市は10.8km/hから10.5km/hへわずかに低下しており、改善したとは言えません。
この記事の結論
那覇市の混雑時旅行速度は2015年から2021年にかけてほぼ横ばいながら低下しました。2021年も東京23区・大阪市・名古屋市より遅く、全国平均のおよそ3分の1です。
2015年と2021年の比較
同じ都市区分、同じ混雑時旅行速度で比べると、結果は次のとおりです。
| 地域 | 2015年 | 2021年 | 変化 | 変化率 |
|---|---|---|---|---|
| 那覇市 | 10.8km/h | 10.5km/h | -0.3km/h | -2.8% |
| 東京23区 | 14.6km/h | 13.9km/h | -0.7km/h | -4.8% |
| 大阪市 | 15.3km/h | 14.0km/h | -1.3km/h | -8.5% |
| 名古屋市 | 16.4km/h | 15.4km/h | -1.0km/h | -6.1% |
| 全国 | 32.0km/h | 30.8km/h | -1.2km/h | -3.8% |
比較対象のすべてで速度が低下しています。那覇だけが悪化したわけではありませんが、二つの調査年を通して、那覇市が最も遅いという順位は変わりませんでした。
なぜ二つの年を比較できるのか
交通に関する速度データは、対象範囲や時間帯が違うと同じ表に並べられません。今回の比較で重要なのは、2015年と2021年の指標が同じ定義であることです。
2021年調査の「朝夕(混雑時)旅行速度」は、原則として次のように算出されます。
- 平日の朝ラッシュは7〜9時
- 平日の夕ラッシュは17〜19時
- 朝と夕方のうち、平均旅行時間が長い時間帯を採用
- 信号待ちや渋滞による停止時間も旅行時間に含める
- 上り・下りを分けて調査する
国土交通省は、2015年調査の「混雑時」と2021年調査の「朝夕(混雑時)」が同じ定義であることを説明資料に明記しています。そのため、民間サービスの別指標や県全体の値を混ぜる場合と異なり、同じ道路交通センサスの時系列として比較できます。
ただし、測定手段まで完全に同じという意味ではありません。2021年はETC2.0プローブ情報の利用が2015年より広がっており、データ取得技術やカバレッジには変化があります。
那覇市は改善ではなく、ほぼ横ばい
那覇市は10.8km/hから10.5km/hへ0.3km/h、率にして2.8%低下しました。差は小さいため「大幅に悪化した」とまでは言えませんが、少なくとも改善を示す結果ではありません。
全国平均に対する那覇市の割合も、状況はほとんど変わっていません。
| 年 | 那覇市 | 全国 | 那覇 ÷ 全国 |
|---|---|---|---|
| 2015 | 10.8km/h | 32.0km/h | 33.8% |
| 2021 | 10.5km/h | 30.8km/h | 34.1% |
2015年も2021年も、那覇市の混雑時旅行速度は全国平均のおよそ3分の1でした。6年間で全国との差が実質的に縮まっていないことが分かります。
東京・大阪との差はなぜ少し縮まったのか
那覇市の速度は、2015年には東京23区の74.0%、大阪市の70.6%でした。2021年には東京23区の75.5%、大阪市の75.0%となり、比率だけを見ると差は少し縮まっています。
| 比較 | 2015年 | 2021年 |
|---|---|---|
| 那覇 ÷ 東京23区 | 74.0% | 75.5% |
| 那覇 ÷ 大阪市 | 70.6% | 75.0% |
しかし、これは那覇が速くなったからではありません。東京23区は14.6km/hから13.9km/h、大阪市は15.3km/hから14.0km/hへ低下しており、比較都市側の速度低下が大きかったためです。
「他都市との差が縮まった」ことと「那覇の渋滞が改善した」ことは、分けて考える必要があります。
10kmの移動時間に換算すると
平均速度を10kmの移動時間へ単純換算すると、差をより直感的に捉えられます。
| 地域 | 2015年 | 2021年 |
|---|---|---|
| 那覇市 | 約55.6分 | 約57.1分 |
| 東京23区 | 約41.1分 | 約43.2分 |
| 大阪市 | 約39.2分 | 約42.9分 |
| 名古屋市 | 約36.6分 | 約39.0分 |
| 全国 | 約18.8分 | 約19.5分 |
2021年では、那覇市の約57分に対し、東京23区と大阪市は約43分です。同じ10kmでも、単純計算では那覇市の方が約14分長くかかります。
この値は10km ÷ 平均速度で計算した説明用の目安です。実際の任意の10kmルートが必ずこの時間になる、という意味ではありません。
2021年調査を読むときの注意点
コロナ禍に実施された調査
2021年調査は秋季に実施されました。全国の全車走行台キロは2015年度から5.3%減少しており、国土交通省もコロナ禍の影響に言及しています。
そのため、2021年を完全な平常年として扱うよりも、同じ全国統一調査で2015年からの変化を確認できる時点として読むのが適切です。交通量全体が減少した一方で、国土交通省の全国集計では朝夕旅行速度が2015年より「やや低下」している点にも注意が必要です。
ETC2.0の利用拡大
2021年は旅行速度調査でETC2.0プローブ情報の活用が基本となりました。国土交通省の全国集計では、一般国道だけでなく都道府県道などにも広く利用されています。
指標の定義は同じでも、取得できるデータ量や計測技術は2015年と同一ではありません。一部区間では、反対方向や他時間帯、前後区間、2015年値などを用いた補完も行われます。
混ぜてはいけない二つの数字
今回の比較には、次の値を使用していません。
沖縄県全体の24.8km/h
2021年の沖縄県全体を対象とする別集計です。那覇市と沖縄県全域では、対象地域も道路環境も異なります。2015年の「那覇市10.8km/h」と直接比較することはできません。
東京23区の一般国道14.8km/h
道路種別を一般国道だけに限定した値です。今回使用した都市全体の「東京23区13.9km/h」と集計範囲が異なります。
似た名前の交通指標でも、地域、道路種別、時間帯、集計方法のいずれかが違えば、そのまま比較できません。
6年間変わらなかった問題
2015年と2021年の順位関係は同じです。
那覇市 < 東京23区 < 大阪市 < 名古屋市 << 全国
人口規模が東京や大阪よりはるかに小さい那覇市で、道路上の移動速度は東京23区や大阪市より遅い。この特徴は2015年だけの一時的な結果ではなく、同じ指標で測った2021年にも続いていました。
道路交通センサスから言えるのは、那覇市の渋滞問題が少なくともこの6年間で明確には改善せず、全国平均との大きな差も残ったということです。道路整備の効果だけでなく、通勤時間の集中、公共交通の使いやすさ、都市機能の配置まで含め、移動需要そのものをどう分散するかが引き続き問われます。
主な出典
- 沖縄県「沖縄県の道路2025」p.5
- 沖縄振興開発金融公庫「沖縄本島内における陸上交通の現状と課題に関する調査」p.5
- 沖縄県「次世代交通ビジョンおきなわ」ビジョン解説
- 国土交通省「令和3年度一般交通量調査 箇所別基本表及び時間帯別交通量表について」
- 国土交通省「平成27年度一般交通量調査 箇所別基本表及び時間帯別交通量表について」
- 国土交通省「令和3年度 全国道路・街路交通情勢調査 一般交通量調査結果の概要」
本記事は、公開資料を基にDEEJI編集部が整理・計算した調査記事です。独自に道路区間を再集計せず、公的資料に掲載された都市別比較値を採用しています。











